衝撃 4

お買い物はまだまだ続く…。

店員の動きが、一瞬止まる。
どこかうつろな目つきをして、「…かしこまりました」と、奥へ下がっていった。

（…よかった。使えたみたいだ）

普段、あまり魔法を使わないために、自分でも妖精だということを忘れそうになるが、
こう見えて、ルルーシュは妖精国の皇子である。
魔力（こちらでいうところの体力のようなもの）は高い方ではないが、力の分配方法がうまいので、
いくつもの種類の魔法を使いこなすことが出来るのだ。

場所移動の他に、性別変換も可能だし（これはスザクがしなくていいと言ったのでこちらでは試して
いない）、それと別に、今回使用した「ギアス」―ただ一度だけ相手を自分の言うとおりに従わせる
ことができる絶対遵守の力―も使用可能なのだ。

ただ、このギアスは、とても魔力を必要とするため、使える時と使えない時があった。
こちらにきてからは、ほとんど使いこなせたことはなかったが…スザクをなんとしても助けたいと
いう強い気持ちに呼応したのだろう。
だが、さすがに疲れた。
目のまわりがぴくぴくするので、この一回が限界だろう。

「…お嬢様、こちらはいかがでしょうか？」

うつろな表情のまま、店員がいくつかのランジェリーを差し出した。
再び、「お嬢様」と呼ばれ、ルルーシュは眉を吊り上げた。
だが、今はそんなこと、気にしている場合ではない。

「…じゃあ、これとこれで。包装は簡易包装でいい」
「かしこまりました」

ルルーシュが選んだのは、黒のレースのランジェリーと、ピンクのサテンのランジェリーだ。
よくわからないので、とりあえず、二つくらい買っておけば間違いはないと思ったのだ。

早々に店を後にする。
次の目的地は、すぐ近くのブティックだ。

「…今度はドレスか…。イブニングドレス…」

サイズもちゃんと指定してある。
随分細い女のようだ。

（…まさか…また、お嬢様とか言われるんじゃ…）

ありうる。
何しろ、スザク以外、人間というやつは、目が節穴な奴ばかりなのだ。
人間界を馬鹿にするわけではないが…それだけは断言できる。

（こんな男らしい俺を女と間違えるんだからな…！）

ルルーシュの中に、自分が女顔だという認識はまるでない。
足取り重く、店に入ろうとしたその時。

「あ～！　やっと見つかったよ～」
「よかった！　ルルーシュくん！」

息を切らせて走ってきたのは、ロイドとセシルだった。
珍しく、ロイドが慌てている。

「スザクくん、誘拐されちゃったんだって！？　困るよ、困るよ！　彼、僕の大切なパーツなのに！」
「大変だったわね、せっかくの休暇なのに。シュナイゼル様から連絡があって、ルルーシュくんに
協力するようにって…」

セシルが冷静に、状況を説明する横で、「あああ、あれほどのパーツは見つからないのに！」と
ロイドがパニックに陥っている。
人の恋人を「パーツ」呼ばわりするわ、とにかく失礼な奴だ。
ルルーシュは、頬をひくひくさせながらも、セシルに「ご協力感謝します」と丁寧に言った。
ロイドは使えないが、少なくとも、セシルは信用できる。

「イブニングドレスを選べという要求なんですが…俺は、女性のドレスにはあまり興味がないので…
セシルさんに選んでいただけると助か…！？」
「まあああ！　ドレス！　ルルーシュくんのっ！？　それは、選び甲斐があるわっ！」

皆まで言わせず、セシルが狂喜乱舞する。

ルルーシュくん、の？？