黒うさぎルルたんの日記
黒うさぎ・ルルーシュの生活記録です。
時々小説形式もあったりします。
禁・無断転載/引用。禁・サ○ライズでお願いします。
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2010
花粉症の後日談。
これも、そんなに長くならないと思います。
これも、そんなに長くならないと思います。
妖精の花粉症には、人間の薬は効かない。
というより、本来、妖精界に「花粉症」という病気は存在しないので、
そんな薬を開発する必要性がないのだ。
妖精に優れた順応性があるとはいっても、人間界は妖精界とは全く違う世界なので、身体の中に多少のずれのようなものが生じるのだ。
そこで起きるのが、「アレルギー」である。
ーーというのが、ロイドがありとあらゆる本をひっくり返して得た結論であった。
「でも、まあ…程度にもよるけど…あんまり気にしすぎない方がいいよお。特に、殿下の場合は、満開の桜にだけ反応するみたいだし…。だからさあ、…おやつの桜餅はあげてもいいと思うよ…?」
「駄目ですっ。桜餅には、桜の葉っぱが巻いてあるじゃないですかっ。あれに反応して、またうさぎになったらどうするんですか!?」
あれ以来、スザクはすっかり過保護になった。
もともとそういうところはなきにしもあらずだったが、多分、100倍増しはなっていると思う。
ルルーシュはおやつの桜餅を取り上げられたので、すっかり拗ねていた。
どちらかといえば取り澄ました美人であるが、ルルーシュは本当に表情が豊かだ。
本人はきわめて真面目なのだが、むくれている様は見ている側には愛らしくもあり、おかしくもある。
「殿下、そんなにむくれてないで、プリンはいかがですか? ロイドさんが隠し持っていたのを盗んできましたわ。これ、食べたいっておっしゃっていたでしょう?」
「…そのプリンはこの間、もうくすねた。大したことなかった。…それにひきかえ、あの桜餅は限定100個のスペシャルバージョンなのに…。俺だけ食べられないなんて、これは職場いじめだ! パワハラだ!」
とりなそうとセシルが、先日ロイドがお取り寄せしたプリンを差し出してくれるが、そんなものには見向きもしない。
今日は桜餅モードだったのだ、プリンモードではない。
それに、そのプリンは、到底食べる気がしない見た目をしていたのだ。
セシルは多分厚意でしていることなのだろう。
綺麗なガラスの器にうつし、デコレーションまでしてくれているのだが…。
(…な、何がのってるんだ…あれ…)
こればかりは、スザクの言うことをきいた方がいいと思うのだが、セシルから
食べ物を受け取ってはいけない。絶対に。
彼女と少しでも親しくしたことのある人間ならば、頷けることだろう。
セシルは裁縫はともかくとして、料理のセンスは恐ろしく悪いのだ。
目の端にうつったプリンは、見る影もなくデコレートされている。
カラメルの上からかけられている、青緑の物体は何だろう?
それに、気のせいだろうか。ゴーヤだのごぼうだのが生クリームにあえられて、
そばに添えられているように見えるのは…。
(み、見ない、見ない! 興味持たない!)
少しでも興味がある振りをしたら負けだ。
無関心を装うのが、勝利への第一歩。
一体、何に対する勝ち負けなのか自分でもよくわからないが、そんな細かいことはどうでもいい。
「ごめんなさい、殿下。私のをあげられればよかったんですが…。皆さんが揉める前に食べてしまったので…」
セシルが申し訳なさそうな顔をする。
桜餅が配られたのには時間差があったので、セシルは先におやつをすませていたのだ。
「お願いすれば、シュナイゼル殿下が譲って下さるんじゃないかしら? 殿下のことをとてもかわいがっておいでだ…」
「兄上はっ…!」
ルルーシュは悔しさのあまり、ぎりぎりの歯噛みした。
ものにあたっても仕方ないが、つい、机をバン!と叩いてしまう。
でも、すぐにやめればよかったと後悔した。
ひりひり痛む手のひらを胸に、涙目でセシルに訴えるはめになった。
「…あ、兄上は…自分も食べたいから、俺には譲れないと…。いくら可愛がっていても、これだけは別だとおっしゃった…」
「まあ…」
目尻にじんわりと涙を浮かべるルルーシュを、セシルは気の毒そうに見た。
この涙は桜餅が食べられないことに対する涙ではなく、手のひらの痛みに対するものだ。
「意外にお厳しいんですね。獅子は我が子を千尋の谷から突き落とすと言いますけど、そういう心境なのかしら…」
「そ、んな高尚なはず、ないだろうっ」
ただ食い意地がはってるだけだっ!という叫びはしかし、そのまま、自分にもあてはまるような気がしたので、ぐっと飲み込んだ。
(俺は兄上とは違うんだからっ)
とにかく、桜餅を譲ってもらえるあてもなく、また、さすがに、ルルーシュだって身内以外から奪おうなんて気はさらさらない。
結局、いじけるしかすることがないのだ。
いっそ、今日は仕事をさぼってふて寝していようかと思う。
「でも、…殿下。私、思うんですが…」
こそこそとセシルが耳元で囁く。
「スザクくんは、殿下にメロメロでしょう? 可愛くおねだりしたら、一口くらいは食べさせてくれるのでは? 男の人って、おねだりに弱いでしょう?」
「…なんか、そんなことを前に言われたような気もするけど…」
でも、あいつ…意外と俺様で、亭主関白なところがあるんだけど…というのは言わないでおく。
セシルの目がやけにきらきらしていて、嫌な予感がしたのだ。
「陛下には申し訳ないんですけど…先日、陛下がうさぎになった貴重な場面を、私、見逃していますでしょう? だから…実は作っちゃったんです!」
「…何を?」
貴重な場面…。
見方によって、随分と違うものだ。
確かに貴重かもしれないが、ルルーシュだって、二度とあんな目にはあいたくない。
言葉を発することもできない。スザクに抱きつくことも出来ないという状況は、とても切なく、悲しいものだった。
「…で、…何を作ったって?」
「うふふ…ご覧になります? 自信作なんです! ふわふわの触感を生かしたんですよ」
ふわふわの「食感」?
同じ「しょっかん」でも、ルルーシュには違うものに聞こえた。
食べ物の話をしていたのだから当然といえば当然。
ふわふわの「食感」とは一体?
「まずは、…これ」
そうして、セシルが取り出したのは、人参だった。
なんで、ここに人参?
「…それ、セシルさんが栽培したのか?」
「ええ、最近、家庭菜園にはまってて。無農薬なんですよ。とってもおいしいんです」
「…へえ…」
確かにうまそうだ。しかし、ふわふわの食感とはほど遠い。
「…で?」
「もう、せっかちですわね、殿下。これは、ちょっとした小道具なんです。このかごに入れて…、ほら、こうやって持つと可愛らしいでしょう?」
小振りのかごだ。
セシルは、なぜかそれをルルーシュの腕にひょいとかけた。
「そして、次はこちら」
「…マント?」
「ええ、…赤いマントがポイント!」
かごにマント?
ルルーシュの頭の中は、クエスチョンマークが飛びまくっていた。
「次に、このつけ耳と尻尾と…いろいろあわせたうさぎコスチューム!」
「…うさぎ?」
「ええ、可愛らしいでしょう? 殿下の髪の色にあわせて、黒で統一しました」
「…ふうん」
まさかそれを自分に着ろ、とでも?
あえて、そんなもの着なくても、なる時は黒うさぎだ。
意味がない。適当にあしらわねば。
とりあえずは、最後まで話をきくことにした。
「で、このコスチュームをつけて、小道具をもって、「桜餅食べさせてくれなかったら、寂しくて泣いちゃうんだからv」とかいったら、イチコロだと思うんです。まあ、そのかわりに、殿下が食べられてしまうかもしれませんが…」
「え、…食べられる? 俺が?」
「ええ、…それはもうおいしく…」
ルルーシュはさあっと青ざめた。
この場合の「食べる」は、もちろん、食の意味ではない。
ちょっとエッチな意味だったのだが、「しょっかん」を「食感」と勘違いしているルルーシュは、食の意味でとった。
(よ、妖精殺し…!)
スザクのことは好きだが、食べられるなんて冗談じゃない!
そういえば、その昔は、妖精の肉を食べると人間は不老不死になるというとんでもない噂が流れて…危うく殺されかかった妖精がいたとかいないとか…?
本当のところは人魚の肉らしいのだが、それすらも、真実かどうかあやしい。
もともと長命の妖精にはわからないが、人間は不老不死に憧れる傾向にあるそうだ…。
(で、でも、…スザクはそんなこと興味なさそうなのに…)
そうだ、違う。
ルルーシュは思い直した。スザクが、そんな俗なことに興味を持つわけないではないか。
ーーいや、待てよ。
(…あ、そ、そういえば…)
そういえば、以前、見た映画で…愛情が強すぎるあまり、恋人を食べてしまった少女の物語があったような…。
スザクがルルーシュのことを大好きなのは、自他ともに認めることで…。
そういった意味ならば、「食べたい」と思うのは、あることかもしれない。
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