黒うさぎルルたんの日記
黒うさぎ・ルルーシュの生活記録です。
時々小説形式もあったりします。
禁・無断転載/引用。禁・サ○ライズでお願いします。
コメント頂けるとすごくうれしいです♪
2010
あともう少しで最終回。
「そんなの駄目だよっ…、ルルーシュ! 僕は絶対に、君と別れたりしない!」
スザクは小さな身体を強くーけれど、多少の手加減はしつつー抱きしめ、言った。
言った、というよりは叫んだという方が近い。
「大体、…その身体でどこに行くっていうんだよ? 一人で外に出たら危ないだろ…」
「か」
「え」
「る」
ルルーシュはしょんぼりした様子で、舌で言葉を示す。
長い言葉を書くことが出来ないので、ルルーシュ自身いらだっているようだった。
スザクは小さな頭を指でそっと撫でてやり、「君が帰る場所は「この部屋」だけだよ?」と縋るように告げる。
二人は離れないと誓ったではないか。
健やかなる時も病める時も…と。
あまりにイレギュラーな事態ではあるけれど、スザクには乗り越える自信があった。
このまま、ルルーシュがうさぎの姿から元に戻らなかったとしても。
だって、スザクはルルーシュ無しでは行きていけないのだ。
「…僕を一人にしないでよ、ルルーシュ。…君がいなくなったら、…どうやって行きていけばいいかわからないよ」
涙が溢れた。
泣いている場合ではないというのに、ルルーシュがあんまりひどいことを言うから
悲しくなってしまった。
「な」
「く」
「な」
黒いうさぎはどこか慌てた様子で、手のひらにそう書いた。
毛むくじゃらの手も足も、小さな舌も、ひくひくする鼻も。
それらは全て、スザクが知っているルルーシュのものとは違うけれど、それでも、
愛しくてたまらなかった。
スザクはルルーシュの鼻に自分の頬をすりよせる。
「なら…わかれるなんて、言うな。…君がいなくなるって考えたら、涙が止まらないんだ…。頼むから、…ルルーシュ。僕のそばにいて…」
ルルーシュと出会う前は、一人に慣れっこだった。
一人暮らしも寂しくなかったし、友達がいなくても、どうってことなかった。
だけど、もう駄目だ。
ルルーシュとのあたたかく優しい生活を知ってしまった今では、あの頃に戻れない。
一人になるのは嫌だ。
そして、ルルーシュ以外の誰も、そんなスザクを癒すことは出来ないのだ。
ルルーシュはきゅうんと小さく泣く。
そして、再び、手のひらに舌を這わせた。
「な」
「に」
「も」
そこまで書いて疲れたのか、少し動きを止める。
そして、先を続けた。
「し」
「て」
「や」
「れ」
「な」
「い」
書き終えると、紫色の瞳からぽろりと涙がこぼれ落ちた。
ーー何もしてやれない。
その言葉に、スザクは胸を締め付けられた。
この身体では、スザクのために何もしてあげられない、だから、別れたいのだと。
ルルーシュはそう言うのだ。
なんという思いやり。
だけど、それは、スザクの心を苦しめるばかりだ。
「…君は、僕が軍人だから、好きなの?」
スザクは訊ねた。
ルルーシュは、「え」というような顔をしながら、ふるふると首を横に振る。
「…じゃあ、…僕がセックスがうまいから…好きなの?」
ルルーシュの身体がわずかに硬直する。
そして、すぐに、慌てたように、首を振った。
スザクはルルーシュの小さな顎を捕まえ、顔を固定した。
決して、自分から目をそらしたりしないように。
「…僕もそうだよ、ルル。…君が、妖精の国の皇子様だから好きになったんじゃない。君とのセックスが気持ちいいから…そんな理由で好きになったんじゃない…。君が君だから…好きになったんだよ? 君がそばにいてくれるだけで、僕は幸せになれるのに…それが、何もしてやれない、っていうことになるのかい…? 違うよ、…ルル。間違ってるよ、…」
存在価値。
そういう言葉で表すのならば、何かをするからではなく、その人がそこにいることが意味がある。
ルルーシュがすぐそばにいてくれること。
それだけで、スザクがどれだけ幸福になれるか、彼は知らないのだ。
「…そばにいてよ、ルル。…どこにも、行くな…」
ルルーシュは前足でスザクの手をぽんぽんと叩いた。
顔を動かしたい、という合図らしかった。
望み通りにしてやると、ルルーシュは戸惑いながらも、
「い」
「い」
「の」
そう書いて、軽く首を傾げた。
スザクは泣き笑いの顔で、大きく頷く。
「馬鹿…当たり前だろ…」
いいも悪いもない。
ルルーシュはスザクのそばにいなくては駄目なのだ。
そんなこともわからないなんて、ルルーシュは頭が悪すぎる。
ルルーシュはいなくなったりしないのだ、と安堵感からさらに涙がこぼれた。
涙と鼻水とで…きっとすごい顔になっているだろう。
ルルーシュは小さな舌で一生懸命に舐めて、慰めようとしてくれている。
「大好きだよ、ルル。…君がどんな姿になっても、僕は君だけが…好きなんだ。君はいつも言うけど、僕たちは伴侶なんだ。だから、どんなことがあっても、…絶対に離れちゃ駄目なんだよ…」
「きゅうん…」
わかったよ、とでもいうかのようだった。
目にいっぱい涙をためて、ルルーシュが頷く。
スザクは小さな顔に唇を寄せ、小さな、本当に小さな唇に自分のそれを寄せた。
ーーその時。
「…ほああっ…」
甲高い悲鳴とともに、手のひらにずしりと重みがかかった。
目の前にある顔は、うさぎのものよりもずっと大きく、そして、スザクがよく知る人の顔だった。
「…ルル、…って、…あぶな…っ…」
手のひらで人間を抱えるのは、いくら何でも無理な話だ。
慌てて態勢を入れ替え、なんとか両腕でルルーシュを抱きかかえることが出来た。
腕の中には、全裸のルルーシュがー人間の姿のーいる。
呆然とした顔で、自分の顔や身体をぺたぺたと触っている。
「…あれ、…戻った…?」
「…ルル、…戻ってる、よ…」
スザクはルルーシュの身体をきつく抱きしめた。
ルルーシュだ。
ここにいるのは、確かに、ルルーシュだった。
毛むくじゃらだった手や足は、いつも通りの人間の手足に戻っている。
雪のように白い肌の吸い付くような感触。
桜色の唇。
今や、ルルーシュは半うさぎの姿でもなかった。
「…ホントだ、…俺、…戻った…」
ルルーシュは大きな瞳からぽろぽろと涙をこぼした。
あとからあとから溢れてくる涙。スザクは唇と舌でそれを吸い取る。
「…泣き虫」
「…お、お前も、…だろっ…。さっき、泣いてたの、俺が慰めてやったのに…」
ひっくひっくとしゃくりあげながら、言い返してくる。
「そうだね」と頷いて、スザクはルルーシュの頭を胸元に抱き寄せた。
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