色仕掛け ８

甘えたいお年頃…。

「待ってて、今、水枕作ってくるから」

そんなことを言い置いて離れようとするから、ルルーシュは軍服の袖をしっかりと掴んだ。
「水枕、いらない…」と小さな声で告げ、上目遣いに見つめあげる。

「…どうしたの、ルル？　頭痛いんでしょ？」
「…も、もう痛くなくなった！」

そうなの？　とスザクが小首をかしげる。
さっきのあの、いかにもな言い訳、本当だと思っているんだろうか？
もしかして…からかわれてる？
じっと見つめてみるけれど、翡翠の瞳には曇りは一点もなく…そうは思えなかった。

それなら…こういう場合、何て言えばいいだろう？
ルルーシュは考え込む。

（…病気じゃないのに…）

くしゃみから始まって、さっきの幼稚な言い訳。
スザクは、ルルーシュが風邪をひいたのだと思っただろう。
だが…。

（痛いのは、頭じゃなくて…ここ…）

つきん、と痛むのは、胸。
だが、肉体的に傷がついているわけではないから、心理的なものだろう。
いつもみたいに、抱きしめて、甘やかしてほしいのに、スザクがそれをしてくれないからだ。

せっかく帰ってきたのに…離れてばかりで。
もっと近くに来てほしいのに…。

（スザクの馬鹿…）