はんぶんこ(完全版）

お題配布サイト様よりいただきましたお題に挑戦です。

「甘すぎる二人に５題」

配布先：記憶のカナタ。
http://www.geocities.jp/maturi_missing/index.html

＊夕方アップしてたものを書き加え、完成させました！

******

妖精の国の皇子だというわりに、ルルーシュは慎ましい。

たとえば、納豆は嫌いとか…そういう好き嫌いはあるものの、基本的に、食事には文句を言わない。
スザクが作ったものは、大抵何でも「おいしい」といって食べてくれるし、おんぼろなパソコンでも文句を言わないし。

以前、「新しいのを買おうか」と提案したのだが、インターネットしか使わないから壊れるまでは今を使う、と言い切られた。

おそらくは、スザクの財布事情を考慮しての言葉だろう。

すんでいるアパートだって、ワンルームの狭い部屋なのに…「スザクのにおいがついてるから好き」なんてかわいいことを言ったりする。
とにかく、かわいい。

「ねえ、ルルーシュ」
「何？　スザク？」

スザクのひざに頭をのせて、嬉しそうにごろごろしていたルルーシュは、声をかけられてゆっくりと起き上がった。
小首を傾げて、こちらを見てくるのが、まるでキスをねだっているように見えて、スザクは素早く柔らかな唇を奪い取る。

「…キス、したかったのか？」
「…う〜ん、それは後からかな」

もじもじしながら、ルルーシュがスザクにすり寄ってくる。
さりげなく唇を尖らせてみたりするのは…今度こそ、キスをねだっているのかもしれない。

だが、それはまた後だ。

「実はさ、ルルーシュにおみやげがあるんだ」
「おみやげ？」

給料日には、何かしらお土産を買ってかえることにしている。
今日も、ルルーシュのお気に入りのケーキ屋で、ケーキを買ってきた。

「もう、ケーキ、食べたよ？」
「…うん、もう一つ、あるんだ」

ケーキはケーキ。
当たり前すぎるお土産だ。

もっともっと、ルルーシュが喜びそうなもの。驚きそうなもの。
そんなものを探していて、この間、ようやく見つけた。

名残惜しそうなルルーシュを残して、冷蔵庫に向かう。

ロイドのつてで、買ってもらった、おばけイチゴ。
大人の男の手のひら大のそれは、甘みも強い高級品だ。

はい、と目の前に差し出すと、ルルーシュは奇麗な瞳をきらきらと輝かせた。

「おっきい…！　これ、イチゴ？」
「そうだよ。ルルーシュ、イチゴ好きだろう？　これ、なかなか手に入らないんだって。すごく甘くておいしいらしいよ。食べてごらん？」

ありがとう、と笑顔でいいながら、ルルーシュはかぷっとイチゴにかじりついた。

「すごく甘い！」

果汁が唇を濡らす。
ぺろりと舌先で拭うのが、少しばかりエロティックだ。

「…スザクも、こっちから食べて」

ルルーシュは自分がかじりついていない方を指差し、お前も食べろ、と促してきた。

「僕はいいよ。君が全具食べて…」
「駄目っ！　…だって、はんぶんこの方がもっとおいしくなるよ？　あの…」

もじもじしながら、何を言うのかと思えば…。

内緒話のように、耳元でささやかれたことに、スザクは卒倒しそうになった。

「…エッチだって、「はんぶんこ」のことする方が、ずっと気持ち良くない？」
「…はんぶんこ…？」
「…さ、最初の時にやったじゃん…。俺がスザクの…その、…舐めて…スザクが俺のを…」

そこまで言うと、ルルーシュは「もうやだっ！」と顔を真っ赤にして、スザクの太腿をつねった。

正直…つねられても困るのだが…。
つまり、ルルーシュが示唆する「エッチのはんぶんこ」というのは…。


（…シックスナインのこと…？）

そういえば…初めての時はしたなあ、とスザクは感慨深げに思い出す。
さんざん、「やだやだ」と泣いたような気がしていたけど…。

（…気持ちよかった、んだ？）

まさかルルーシュからそんなことを言われる日がくるとは。
普段、ものすごく意地っ張りで素直じゃないくせに…時々、ルルーシュはものすごく素直になる。

（…ふ～ん）

そこまで言うのなら。

「…じゃあ、はんぶんこ、貰おうかな」
「そうだよ、お前も…って、…え？」

だが、スザクが手にとったのは、おばけイチゴではなく、ルルーシュの手だった。
果汁にぬれた指先をぺろぺろと舐めて、そのまま自分の方に引き寄せた。

「…スザク？」

小首をかしげ、こちらを見つめ上げてくるルルーシュの頬に、軽く唇をタッチさせると、その耳元で囁いた。

「…それなら、エッチのはんぶんこ、しよう？」と。